医師国家試験をほぼ紙のQBだけで受けた話 後半
いいか、覚えておくといい。学問には王道しかない——森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』
この記事は前回の 医師国家試験をほぼ紙のQBだけで受けた話 前半 - 木曜の医師国家詩篇 の続きです。
前回で取り敢えず去年一年を振り返り、それを踏まえた上で僕なりに動画講座なしにQBだけで勉強することについて書きたいと思います。
受かり方っぽい書き方についついなってしまいましたけど、僕も言うてボーダー層でしかなくて実際これくらいのことしかできなかったけど、これをこうしたらもっと良かったな、という反省の記録です。批判的に読んでもらえれば幸いです。
たいていこういう記事書いてるの頭が良い人なんでそういう人の記事と読み比べて「そんなこと言ってるからダメなんだよなぁ」みたいに読んでください。
また前回も言いましたがこの記事で想定しているのは「去年の僕」「今年落ちた場合の自分」「偏差値が体温以下、足のサイズもなくて臓器別の知識がほぼない人間」です。
それ以外の人は落ちこぼれ医学部生の地獄を覗き見る感じでどうぞ。
目次
- 何故動画講座を見なかったのか
- QBの良いところ、個人的に良かったと思うQBの使い方
- QBの良くないところ、失敗したなという使い方
- イヤーノート
- レビューブックマイナー
- 病気が見える
- QBオンライン
- 鑑別1st impression
- QC
- 各種模試との付き合い方
- 回数別 -これが一番大事♩-
- 国試の問題についての個人的な分析
- 予想問題について
- 見ておくべきありがたい無料で観れる動画
- 結局動画講座なしのQBだけで国試ってなんとかなるの?
- それでも一度始めたのならば
何故動画講座を見なかったのか
そもそも何故動画講座を見なかったのか。
理由は何個かあります。
①経済的なもの
すでに留年のための学費という無駄な出費を親に負わせてしまっていた
②動画講座での失敗
前回記事にもリンクをのせましたが、僕は一度メックの講座を通年で購入しながら殆ど見ませんでした。サマライズは留年後の暇つぶし的に見てましたが、全然頭に入りませんでした。勿論やる気の問題が大きいのですが、そもそもの話として人の話を聞きながら理解するというマルチタスクが僕はとても苦手で聴くか書くかしか僕は出来ず(それ自体は今後の人生の課題でもあります)、向いてないということもありました。
③時間がない
留年して気が抜けて正気に戻ってなんとか勉強やるか、と思ったのが四月の時点です。メックの通年講座など恐らくそこから見ようとしても無理だったと思います。medu4 も実際友人に勧められましたが、上記の経済的理由と苦手意識から回避してしまいました。
④舐めてた
舐めてました。医師国家試験と自分のアホさ加減を。
QBの良いところ、個人的に良かったと思うQBの使い方
取り敢えずまずは良いところから。
①全て国試の過去問である
当たり前ですが、過去問のみで構築されています。これについては後で書く回数別のところでも書きますが、国試は本当に過去問が命です。実際に試験を受けてより強くそう思いました。QBで勉強しておけば取り敢えず「国試の勉強」になるのは間違いないです。変に意識高くレジデントノートとかハリソンとか読み出すよりはいいと思います。学力が低い人ほど。
②疾患ごとのまとめが割と使える
QBと言えば問題演習だと思うんですが、よく読むと重要な疾患については数ページのまとめが付いており、国試におけるポイントなども解説してあります。個人的にはこれが割と重要でした。
③解説に表やまとめがある
似たような疾患、例えば甲状腺が腫大する疾患の鑑別ポイントをまとめた表が解説に載ってます。ほとんどは「病みえ」と同じものだとは思いますが。
これはイヤーノートが1つの疾患を掘り進めていく構成なのに対して横断的なものの見方をできる、痒いところに手が届くものなので良かったです。ただ、まぁこれにも悪いところというか注意点はあるのでそれは後述します。
④正答率が載ってる
正答率が載ってるのですが、10%とか20%の問題は解くことなく、解説だけ読んで使えそうな情報だけノートに書き出してました。
⑤演習の進め方
よく言われるQBのやり方で、1週目問題だけやる、というのがあります。個人的には微妙かな、と思います。僕みたいになにも知らない人間はそれだけでは疾患のイメージが掴めないからです。かといって全問解くのも愚かだと思います。そこで僕が確立したのは「100回以降の問題だけ解いていく、それ以外のもの、極端に正解率が低いものは解説を軽く読むにとどめる」といった手法でした。
また当たり前の話ですが、解いた時に何故間違ったを考えて走り書きでもいいので後から見れるようにしておくのが大事だと思います。これは国試の問題そのものについて考えたことで後述します。
ですので演習の流れとしては
解く
↓
答えを見る
↓
1週目は取り敢えず見て覚える。2週目で覚えてない知らないあやふやなことの中で重要そうなことがあったら(無限にある)ノートに殴り書きで書き出す(この際綺麗なノートを作らないように注意しました。僕はルーズリーフに殴り書きにして後から読んだらギリわかるかな、くらいの感じにしてました)
↓
あまりに知らなさすぎたらイヤーノートを見て勉強する
↓
復習する
この最後の復習する、のタームが死ぬほど重要でした。当たり前やんけ、と言われるかもしれないんですけど僕みたいな下位層の人間はそういった「当たり前」ができてないからこのざまなわけです。
僕はQBを1週回した時は3週間後に復習するようにしました。ほとんど解けるようになってませんでした。ビックリしますよ。マジで何も一回目で覚えてねぇんだなってなって絶望します。しかし、そのあとまた1ヶ月2ヶ月経ってから復習するとそこそこ覚えてました。短期間で復習する、というのが本当に大事なんだと思いました。
⑥暗記カードを作る
さっきまでの復習の話の続きになりますが、僕は途中からそのノートに書き出した内容をもう一度書いて覚えるのも兼ねて100均で売ってる200枚110円の白紙の名刺カードに殴り書いて暗記カードを作りました。1日で大体50〜60枚作ってました。それを昼休みの散歩でベンチで休憩してる時や、狭い電車に揺られる通学中にやるようにしました。その日のうちに一回、次の日の朝に一回、そこで覚えてたものは捨てて、できなかったものは次の日に持ち越し、そんな風にしました。
これはかなり効きました。
絶望的に知識がなかった僕でしたがこのパルス療法的なやり方が良かったです。
演習そのものよりも復習が大事で、
復習は質よりもスパンの短さと回数
です。
⑦目次を覚える
特に神経とかがそうなんですけど、臓器別が整理できてない人ほど今自分がなんの領域のどういった疾患を勉強しているのかわかるようになるだけでかなり違うと思います。
QBの巻頭の目次は代表的な疾患だけが並んでいて覚えやすかったです。
自分が今どこで何を学んでいるのか
それを自覚しながら進めていくとただ闇雲にやるよりは良いと思います。僕はよかったです。
⑧ノート作り
これは僕の悪癖でついついノートを作りたくなるんです。だから、すでに何回か言ったように綺麗なノートを作らないように殴り書きを心がけました。
直前期に小さめのノートを用意して年末から一月中で間違えて覚えきれてない項目をまとめたノートをを作りました。最後の方で紹介する「直前期にやるべきこと」という動画でやっちゃダメと言われてた行為そのものですが正直やって良かったです。やるならもうちょっと前もってやっておくべきでしたね。お守り代わりに持ち歩き、国試当日のバス車内や休憩中のトイレ待ちの間も読んでました。全部見たことあることしか書いてないので精神的に安定しますしね。休憩時間見れるものは少ないのでパッと見れる、というのは大事だと思いました。
試験直前に見ようと思ってたもの←→実際に見れたもの pic.twitter.com/ywNRx0TGWR
— 木曜の医師国家詩篇 (@mokumoku_poem) 2020年2月12日
⑨録音
これはノート以上に僕の趣味的要素が強いんですが、苦手な分野についてはセルフ講義をアプリで録音してました。口に出すことで覚えて後から耳で聞けて個人的には良かったです。国試前日の部屋で荷ほどきしてる間とかにも流してました。
QBの良くないところ、失敗したなという使い方
①演習で満足してしまう
まぁ問題の答えなんて何回かやればなんとなく覚えていくんですよ。なんかわからんけどこれか?みたいな感じで。それで「出来るようになった」ことにしちゃうとガチで詰むと思います。あとは当たり前の話ですが、QBは全てを聞いてはくれません。例えば多発性硬化症についての検査所見について全ての項目についての問題があるわけではないです。だから、QBの多発性硬化症の問題が全問解けるようになったところで、検査所見についての知識には「必ず」抜けがあります。他の疾患も同様ですが。
こういった時、先ほど言及した疾患についてのまとめや表が役に立ちました。泥臭いですが僕はコピーして赤シート用のマーカーで塗りつぶしてチェックできるようにしました。また中々覚えられないことに関しては暗記カードを作って覚えていきました。
それでも足りなさそうなところはイヤーノートでさらに補うことが必要です。
②量が多い
多いですほんと。これを最初から一問一問解いていったりしたら破滅するしかないと思います。重くて試験場にも持っていけません。これが怖くて僕はQBの代わりとしてルーズリーフで抜けてる部分のまとめノートを作ってました。
ただ、電子版?を使ってる人ならいらないかもしれないです。
③まとめや表を覚えるだけでは意味がない
先程良い点としてあげた表やまとめですが、これを丸暗記しただけでは使い物になりません。実際の臨床問題の中でどんな風に表現されてるのかを理解し拾えるようにならなければ意味がない。
ここからはその他の教材についてです。
イヤーノート
僕にとってはQBで不足してると感じた部分をイヤーノートで補った感じです。主には治療法などですね。あと臓器別の治療薬のまとめが章末にあるのですが確認に役立ちます。
レビューブックマイナー
マイナーは取り敢えずレビューブックの内容を覚えてそれをQBで演習して覚える、という感じでした。
病気が見える
産婦人科はレビューブックもないので「病気が見える」を使い基礎的な学習をしました。ごく初期の四月五月の段階では他のメジャーの勉強でも使いましたが、夏以降使うことは無くなりました。
QBオンライン
僕はQBが貰い物であったことからオンラインの解説が読めず、またアナログ人間であったため利用しませんでした。
鑑別1st impression
これはmediLinks内で無料で手に入るものです。とりあえず鑑別とかなんかよくワカンねぇぜ!という人は見てみたらいいと思います。また、postccオスキー対策にもなります。
QC
これもmediLinks内にある無料サービスで本来選択肢になってるものを⚪︎×形式で聞いてくれるもので、先程僕がいった暗記カードを作る作るのが面倒な人は是非一度みてください。僕はこれの存在を今年の1月に知ったのでもう間に合いませんでしたが、軽い復習としていいものだと思います。覚えてた「つもり」のことを炙り出せます。
各種模試との付き合い方
模試、ちゃんと受けて答案提出したのは冬メック だけです。二日間丸々時間を取られるのが嫌でテコム模試は第3回も4回も一日1ブロックのんびり解いてました。採点はまともにしてません。しかしまぁどの模試も復習はほとんどできませんでしたね。復習すると恐ろしく時間かかるんですよね。できてない人ほど復習することが増えて1週間くらい模試受けるのと復習で潰れちゃうかもしれないです。それぐらいヘヴィーです。
模試は出来なかった人ほど復習も大変で、しかも模試の傾向として国試より難しくマイナーな疾患を聞く傾向にあるので基本的なことができてない人が模試の復習を時間をかけてしっかりするメリットはあまりないように感じます。それよりも自分が今やってる基幹教材をつかった臓器別の完成を進めた方がいいと思います。
ある程度出来てる人が穴を確認するとかならいいんでしょうけど、存在自体が穴みたいな僕のような学生は模試は後回しで日々の進捗のプラスアルファとしてなんなら1ヶ月かけてチマチマやるくらいがいいんじゃないかと思います。ただ、僕自身はこんなやり方してないので効果は保証しませんが。
僕自身は、冬メック は適当に答案読んで気になるとこにマーカー引いただけで多分頭にほとんど入ってません。
直前期に公衆衛生と苦手意識のあった産婦人科だけ見直しました。
復習するにしても領域別に復習するのがいいかな、と思いました。
回数別 -これが一番大事♩-
なんなら何よりもまずこれをすべきです。なにしようか迷って足が止まるくらいなら取り敢えずこれを解けと言いたいです。直前期でも。何故ならこれは国試に出る範囲で国試に出るバランスの問題がまとまったパーフェクトな教材だからです。
まぁ、あまりに古いのはアレでしょうけど。
確かに近年傾向の変化だとかはあるのだと思いますが、
わけわからん模試の復習するくらいなら回数別やる方が絶っっっっ対に価値があります
、マジで。
110・111・112は回数別解説書が手に入ったので(ゴミから拾った)それで勉強しました。ゴミ箱になかった最新版の113回分はmedu4のデータベースで勉強しました。テキストに比べれば解説そのものはアッサリですが押さえるべきところは抑えてありましたし、よくわかんないとこをイヤーノートとかで調べるのが必要になってくるのはどちらも同じでした。
ただ解くだけではなく、正当の選択肢以外の選択肢についても吟味し理解し必要なら調べることが求められます。
国試の問題についての個人的な分析
いやまぁこんなもの僕よりはるかに賢い人たちがしてきてるのでそちらを見ていただくなりしてもらったほうが良いんでしょうけど、せっかくなので言います。言いたいこと全部無責任に言います。
まず国試の問題は大きく分けて3つのタイプに分かれます。
①覚えてるだけで解ける
②診断を下す
③治療法含む対応の最善をその場で考える
①覚えてるだけで解ける
これは公衆衛生の問題とかが代表的でしょうけど知ってるか知ってないかの問題ですね。
そしてこれはQBで演習を積む意味がない問題でもあります。とっととイヤーノートかなにかで確認しましょう。これは僕自身そうなんですけど時間がなくてアホなくせに妙に病態から理解しようとしたりするむきがあるけど語呂合わせでもなんでも良いからとっと覚えろ。頭良さそうな人間のモノマネしてる時間はない。
②診断を下す
これは臨床問題などで所見や検査値を拾い上げて鑑別をあげつつ推理していく奴ですね。賢い人は分かんないですけど僕みたいなアホな人間は鑑別は考えて挙げるもんじゃないと思います。
高齢者で長期間咳してる、と言われたらもう問答無用で結核を「想起する」訳です。取り敢えず想起するだけ想起して否定できるかです。1つのヒントから1つのの疾患を出すんじゃなくてバァ〜っと候補の鑑別を「想起して」そこからあるべき所見や検査値はあるのか、年齢は?性別状況は?ということを考えていきます。そこらへんQBの解説は過程をしっかり書いてくれてるので読み飛ばさずに読んであげてください。
③治療法含む対応の最善をその場で考える
いわゆるワンベストとかいうやつなんですかね。これは知識があること前提で、その上での判断力が求められます。苦手でした。苦手です。僕は所謂常識がないタイプの人間で「みんなと同じ判断を下す」ということが死ぬほど苦手です。
これの克服法は、センター現代文と同じように解くことだと僕は結論づけました。基本的に問題文の中に根拠はあるはずなんです。「作者の気持ちを考えなさい」なんです。僕らの気持ちは聞いてないんです。
常識ない勢 の皆さん、皆さんの「なんとなく」を信じないでください。
英語を読むように、自分の体感とある意味切り離す訓練を積んでください。
上面の言葉に引きずられぬように問題文の言葉を翻訳してください。
これは訓練です多分。
前回記事で晒した冬メックの成績から僕が伸びた部分があるとせればそこです。
正直知識の伸びはそこまでなかったように思います。必修の伸びは間違いなくそこです。
予想問題について
僕は今年、予想問題の類は講師速報の無料で貰えるやつしかやってません。
国試って何が出るかといったら極論、心不全と呼吸困難と公衆衛生なわけですよ。それが最高の予想問題です、ほぼ絶対出ますから。
予想問題の新規知識って完全に「当てにいってるのにでない」知識なわけじゃないですか。
そんなの拾う暇があったら自分の知識を固めたほうが良いと無責任に言い放ちます。
見ておくべきありがたい無料で観れる動画
medu4講師の先生が直前期の勉強について語ってくれます。いかに直前期に時間の余裕がないかわかります。直前期に見ても良いですが、来年受験する人は雰囲気を知るために春のうちに見ておいても良いと思います。
もしもこの記事を必死に読んでるような人間は実習なぞ真面目に出ていなかったでしょうし、本来なら「実習で見てたら分かる」系の問題対策として息抜きに見るのはアリだと思います。動画自体は111回の国試に向けてのものですが、114回でもこの動画で触れられてた感染性廃棄物かなんかのマークを問う問題は出てたはずです。
結局動画講座なしのQBだけで国試ってなんとかなるの?
長々と語りましたが結論から言えばなると思います。ただしそれはもともと成績が良くて国試というよりUSMLE?とか医学そのもの勉強をしているような人間がやることだと思います。
僕はまとめノートや暗記カードを作りましたが結局それは劣化版medu4やサマライズ、劣化版究極mapでしかないのだと思います。
頭良い人間が作った教材にはきっと勝てません。
ノートなりなんなりを作れば自分用にカスタマイズされた教材は手に入るのですが、それが果たして国試に対して必要十分なのかを証明することができません。
それにここまで読んだ賢明なあなたは既にお気付きでしょうが、こんな風に語る僕自身がQBで足りない部分を他のことでなんとか補おうとしていますよね。
だからありきたりな言葉を僕は身をもって言いたい。
みんなと同じことをしろ。
それに尽きます。
それでも一度始めたのならば
QBにせよなんにせよ、一度コレと決めたのならその教材でやり抜くと決めたのならそれでやり抜くのがきっと大事です。僕たちより賢い人が作った製品なのですから。
乱筆乱文誠に失礼。
勢いで書き上げたものゆえにちまちま自己満足の加筆をすることと思います。
てか僕も落ちてるかもですしね。時々ふと瞬間冷静になって「いやでもこれ俺落ちてるかもしんねぇよな、こんな調子乗った記事書いてる場合じゃないのでは?」となって部屋の隅で震えています。
その時は一緒に頑張りましょう。