木曜レジオ

恥の多い人生ですね(達観)

架地② 徒逃げ

か‐ち>【架地】 〘名〙

① 不安定な土地のこと。〔唐太宗‐置酒坐飛閣詩〕 ② 存在しない土地のこと。 ※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「抑、伝説にあるアトランテイウス大陸なる架地では」 ③存在しない番地。①から転じて ④(形動)不確かな前提に基づくさま。 ※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「そんな架地な事を宛にして心配するとは」 〔福恵全書‐蒞任部・攷代書〕 ⑤災害が繰り返し起こる土地のこと ⑥何かを吊り下げるための土地のこと。崖と崖を繋ぐ橋の土台部分のある土地のことなどを言う。 ⑦交通の要所のこと。土地と土地をつなぐ土地のこと。⑥の意義から橋のイメージからか。 語誌]漢籍に典拠を持つが、近畿地方でかつて使われた「禍地(カチ)」が①の意義と混同される過程で集合し、⑤の意義が生じたものと思われる。

怖い話、ですか? うーん、怖くはないのかな、これは。どちらかと言うと不思議な体験なのかな。 これは、私が▲▲山に行った時の話なんです。 小学校の遠足で行ったんですけど、中々ハードな遠足で、小学生にはそもそも少しきつかったんじゃないかな。 急な山道を延々と上る感じで、木々も鬱蒼としてて、割と本格的な山に思えました。 暑い夏の日で、なんだか喉がよく乾いたのを覚えてます。 そのせいか歩くうちにどんどんと頭がぼんやりとしてきて、いつのまにかみんなと逸れちゃってたんですね。 それで、気づくと目の前に小さな滝があったんです。喉があまりに乾いてたもんだから、手のひらで掬って飲んだんです。美味しかったなぁ。 でもやっぱり生水なんか飲むもんじゃないんですかね、飲むとすぐに気持ちが悪くなってきて、えづきはじめちゃったんです。 おえっと、はじめに少し吐くとまず、右手の感覚が無くなりました。 怖かったです。いきなり自分の手が自分のものじゃなくなったような感じで。動くは動くんですけど、感覚がなくて。 そこで漸く自分が遭難してることとかの恐怖がどっと出てきたんです。そうしたら、「おいで」と言う男の声が背後の滝から聞こえてきたんですよね。それがきっかけでうわぁとなっちゃって、パニックで走り出したんです。でも吐き気は続いてて、おえおえし続けてたんです。そのうち左手の感覚も無くなってきて、もう涙も出てきちゃって、そしたら体とか足の感覚も徐々に無くなってきてもう何が何だか分からなくなって、しまいには目も見えなくなっちゃって、走ってるのか転けてるのか何もわからないうちに、女の声で「いってらっしゃい」と言われたかと思ったら今度は女の子の声で「返して」なんて叫び声まで聞こえ始めて、もう半狂乱のまま走ってるとそのうち目も見え始めて足の感覚も戻って、気づいたら茂みを体中葉っぱまみれにしながら突き抜けて、クラスメイトたちのまん前に飛び出てたんですよね。 もう、みんな、私がいなくなったもんだと思って大騒ぎになる直前だったみたいで。 えぇ、とても怒られました。どこ行ってたんだって。 先生には滝のところに行ったんだと言う話もしたんですけど、この山にはそんな滝なんかないと言われてしまって。混乱してる私をみて、ひどい熱中症だと思われたのか、それ以上は先生も怒りませんでしたけども。 怖かった、と言われればそうなんですけど、なんというかどこか他人事みたいな感覚で、今思い出してもあんまり怖かったなぁ、とは思わないですね。