木曜レジオ

恥の多い人生ですね(達観)

VRの幽霊

 こんな夢を見た。

 私は、恋人とどことも知れぬ廃墟を歩いていた。夢だからなんの脈絡もない。
 デートだったのかなんなのか。
 私はともかくとして、彼女にはそんな趣味はないはずだが、兎も角、私と彼女は廃墟の中で手をつなぎながら歩いていた。
 すると、少し先の方から人の叫び声が聞こえた。私たちは急ぎ足になってその声の方へと向かった。
 そこには恐怖に怯える男性と、血塗れの女の幽霊がいた。
 いかにもテンプレな光景ではあったのだが、異様だったのは、その幽霊がVRゴーグルをつけていたことだった。
恐怖に目を見開き、床にへたり込んだ男に幽霊は近づいてゆく。
「ふ、ふ、待ってた?私が、来て、嬉しそうで、嬉しい」
幽霊の手が男の顔へと伸びてゆく。一体この幽霊にはどんな光景が見えているのだろう。
「行こ!!」
 その彼女の叫びにハッと我に帰った私は彼女に手を引かれ走り出した、いや、走り出そうとした。
私は、彼女の手を振り解き、自分の顔へと手をやると、そこには確かにVRゴーグルがあった。
 彼女の手は果たしてあんな触り心地だっただろうか。

そんな夢を見た。