患者かもしれない第10診 8冊目「不眠診療ミニマムエッセンス」
真夜中4時のタイムラインは 幾度更新せども動かず この世にまるで一人 病魔に取り憑かれる
小田桐仁義 「White Mirage」
いや、本自体は読んでるんです。でも虫食い的な読書に終始していたりして。読了したと言えるのがなかなかないのでね。
前回
structural-alien.hatenablog.com
と言うわけで今回はこちら。
不眠診療ミニマムエッセンス 井上真一郎 著
目次
概略
以下Amazonからの引用
不眠患者は年々増加し,一般外来や一般病棟でその対応に困っている医師も多いのでは? 様々な作用機序の新薬も登場し複雑になった睡眠薬に関するアドバイスを求められる薬剤師,医師が指示した「不眠時」や「不穏時」の薬をどのように使うか判断しなければいけない看護師にも役立つ,シチュエーションごとの解説! 不眠・せん妄のスペシャリストの大人気講義をよりわかりやすく書籍化した.外来でも病棟でも大活躍の1冊!
目次
1章 外来編 ―短時間で行う能率的な不眠対策― はじめに ・不眠症に対するアプローチ ・不眠の訴え 評価 ・「不眠症」の診断 対応 (1)原因の精査と除去 (2)睡眠衛生指導 (3)薬物療法 (4)薬物療法―説明
2章 入院編 ―せん妄予防を視野に入れた不眠対策― はじめに ・外来と入院における不眠に対するアプローチの違い ・一般病院の入院患者に占める65歳以上の割合 ・「せん妄ハイリスク患者ケア加算」と不眠対策 評価 STEP 1 ・せん妄のリスク評価【看護師】【医師】【薬剤師】 ・「認知症(認知機能低下)」の評価【看護師】【家族】 ・「アルコール多飲」の評価【看護師】 ・「せん妄の既往」の評価【看護師】【医師】 対策 STEP 2 ・せん妄予防を視野に入れた不眠対策 (1)不眠時・不穏時指示【医師】【看護師】【薬剤師】 (2)環境調整【看護師】【家族】 (3)内服中のベンゾジアゼピン受容体作動薬の減量・中止【医師】【薬剤師】 おわりに ・入院後に開始した不眠症治療薬 漫然と出し続けない!
対象読者
初めに、に書かれているように、一般病棟の医師や看護師、薬剤師むけの内容である。ただ、精神科医で睡眠を最初に学ぼうとするとっつきとしてもコンパクトでよくまとまった内容に思う。
骨太度
かなり気軽に読める。文章は読みやすく、わかりやすい。とりあえず睡眠のベンキュしようと思うならここからでもいいのではないだろうか。
読んだ目的
とりあえず簡単に睡眠について学んでおきたかったので読んでみた。
感想
各薬剤の特徴についてもまとめられており、ベンゾ系薬剤との向き合い方の一つのスタンスを知ることができると思う。ベンゾ系薬剤を使うにあたってもここは確認しておこう、と言う項目がクリアカットに書かれており、自分の今後の処方の指針を形作っていく中で参考になるものであった。
フック
「睡眠障害対処12の指針」が本文の中で掲げられている。これが非常にわかりやすい。本文にも書いてあったが、これを最初から患者さんに説明するのは限られた診察時間の中では現実的でもない。患者に睡眠衛生を指導する際に、とりあえず効果的な方法を伝えるのではなく、自分が今指針の中で何を話題にしているのか自覚できることにより、今後の外来診察の中で何を話題にすべきかが明確になると思った。 薬物療法の説明方法についても紙幅を割いており、外来診療におけるテクニックとして参考になると感じた。不眠治療、患者とのやりとりにかなり気を使うので一つの方法論として参考になる。
僕にとって想定される本書の内容を使う場面
不眠を話題に取り扱うことは非常に多く、本書で学んだことを活かして限られた診察時間の中で少しでも、不眠の改善につなげられれば、と思う。
王下ギルド怪異対策課 ダンジョン内連続怪死事件
地球、特にその中でも日本と呼ばれる国からの異世界転移者がある時期より増加した。増加と言っても年に数人ではあるのだが。 彼らはこの世界の人間が持ち得ぬ技能と異能を駆使してこの世界に降りかかる魔王などの脅威から幾度も世界を救ってくれた。しかしながら、彼らの出現とともによからぬものがこの世界に侵入していることに漸く世界は気づきつつあった。 この世界にはモンスターと呼ばれる存在がおり、人間を含んだ生物群とは異なる成り立ちの化け物たちのことをそう呼んでいる。その中には魔族と呼ばれる高知能の存在も含まれ、しばしば魔王化する。 彼らは時として人を襲い国を滅ぼし世界を破滅に導こうとする。 だがしかし、ある種の生物とされている。 アンデッドと呼ばれるモンスター群ですらそうだ。マナと呼ばれるすべての生命体が持ちうるエネルギーを捕食しているのだ。 そこには食物連鎖があり、やり取りがある。
しかし、ある時期よりその法則に則らない新種のモンスターと思われる報告が出始めたのだ。嫌、モンスターと解釈されていたが、正確には説明できない現象とでも呼んだほうがいい。 調査が進むにつれて、異世界人たちの故郷で「怪談」と呼ばれているモノが似通っていることが判明し始めた。モンスターではないので、討伐しようがない。なんらかのナニカはいるが、どちらかといえば現象に近い。それが「怪異」だ。
僧侶たちによる対策チームも組まれてはいるが、有効打にはなっていない。目下、怪異現象の調査収集が急務となっている。 そのために設立されたのが、王下ギルド怪異対策課である。
リディアル王国国王直属のギルド、通称王下ギルド。その業務の多くはモンスター討伐を含む国内の治安維持や開拓である。その中の一部署として、怪異対策課は作られた。
怪異対策課に怪異の疑いのある事件の重要参考人が確保されたとの連絡があった。怪異対策課の新人職員、テニュアが当該事象のインタビュアーに抜擢された。テニュアが呼び出されたのは王下ギルドの警備課棟であった。 テニュアが王下ギルド警備課に呼び出されると応接室に案内され、警備課長直々の対面となった。 「君が、怪異対策課の?」 「はい、テニュアと申します」 警備課長の新人をよこしやがって、という目線にはあえて気づかないふりをして、テニュアは元気よく応答した。 「もう1人来ると聞いていたが、それはどうした」 「あー、『彼』は少々変わり者でして、転移者で自由と言いますか、多分遅れてくると思います」 テニュアが顔を引き攣らせながらそういうと、転移者ならば仕方あるまいと警備課長も納得したようだ。 「ここの常識が通じんやつらだからな、君も苦労しているのだろう。ふむ、まぁいい、取り敢えず今から問題の男に会ってくれ」
数ヶ月前から王都近郊の第48ダンジョン内での死亡者が増えているという。 ダンジョンは当然死の危険もあり、行方不明者が出ることも珍しくはない。そして、ソロの冒険者での死亡事故や行方不明であればなおのことだった。 ただし、異常なのは、その死体が最下層付近で発見されていることだった。しかもその死体の死因はいずれもが餓死だという。 ダンジョンは階層構造となっており、第48ダンジョンも例外ではない。第48ダンジョンは15階層構造となっている。下に潜れば潜るほどにモンスターは強く、より多くなってくる。当然手に入るアイテムも良くはなる。ソロの冒険者はせいぜい第3階層までしか活動できない。それが何故か最下層で見つかるというのだ。可能性として言えば、第三者が死体を最下層まで運ぶ可能性や、途中で合流した何者かが最下層まで降りた後に殺すというものだ。しかしわざわざそんな面倒なことをする人間はいない。囮として利用するというのもわからなくはないが、それが何度も繰り返すほどに効率の良い手段かと言われるとかなり怪しい。しかも最近では徐々に他のダンジョンでも同様の現象が出現するに至り、もはや特定の冒険者パーティーの仕業などではなく「怪異」の仕業ではないかと囁かれるようになった。王下ギルド怪異対策課にも調査依頼の命令がギルドマスターから下るも増え続ける行方不明者と死者を数えるしかすることがなかった。そんな折、マルセスという男がダンジョン内で確保された。
テニュアが案内されたのはギルドの医療室だった。ベッドにはうつろな目をした男が座っていた。 「こんにちは、マルセスさん」 呼びかけられた男はおずおずと顔を上げた。 「あぁ、あんたが」 マルセスはソロの冒険者だった。別にソロの冒険者は珍しくない。専業の冒険者としては珍しいかもしれないが、兼業タイプの冒険者であれば1人であっても、農閑期や仕事が空いてるタイミングで、ギルドの小さな依頼を受けたり、ダンジョンの浅い層に潜ることは珍しくもない。 マルセスは「斥候」のジョブスキルを活かし、ダンジョンの浅層での立ち回りは専業の冒険者にも負けないほどであった。浅層であってもモンスターは出現するが工夫で対応はできるし、回避もできなくはない。ドロップアイテムを手に入れたり、隠しアイテムを見つけることができれば、数日の食費は稼ぐことができる。ソロ冒険者の行方不明事件が続いているという噂もあったが農閑期の今、生活費を稼ぐためにもダンジョン潜りはやめられなかった。ある日、いつも通り第3階層でドロップアイテムを回収していると、声をかけられたのだという。 「君、うちのパーティーに入らないか?」 ダンジョン内で見ず知らずの他人についていくのは自殺行為だ。ギルドの警邏はあるとはいえ、基本的に無法地帯であり他人は信用しないに限る。パーティー内でも報酬の分配で揉めることは多く即席のパーティーを作るくらいなら、とソロで居続けるものも多いのが現実だ。ダンジョン踏破のクリア報酬アイテムもひとつしかなく、パーティー内で揉めることはよくあるのだ。 だから普通であれば無視するべき言葉ではあったのだが、その時マルセスはその男の言葉に「おう」と返事してしまったのだという。 「ちょうど良かった、1人抜けてしまって困っていたんだ。今から僕らは最深階層に向かうところでね斥候を探していたんだ」 そう男は言ったという。マルセスはなんだかそうすることが当たり前だと思ってしまって、疑うこともできなかったのだという。そこから彼らとマルセスの冒険が始まった。見たことのない階層、見たことのないモンスター。それは心躍る冒険だったという。だがしかし、最終階層の手前の階層で思わずモンスターの反撃をマルセスは喰らってしまい、意識が途切れたという。そうして目が覚めると、連続怪死事件を受けて警戒していたギルドの警備員たちに保護されたのだという。発見時周囲には誰もいなかった、というよりも誰かがそばにいた痕跡もなかったという。
「運ばれてきた時の彼、それはひどい状態でしたよ」 医務室付きの僧侶がいう。 「何日も睡眠を取らず、2日分しかない食糧も食べ尽くした後で飲まず食わず不眠不休でダンジョン攻略をしてたみたいで」 そんなことは不可能だ、不可能なはずだが、できてしまった。 「マルセスさん、その冒険者たちの顔は覚えていますか?」 テニュアにとはれたマルセスは首を振る。 「わからない、わからないんだ、何も、あんなに一緒冒険したのに、誰の顔もわからないんだ」 どういうことだろう、怪異がらみかと思ったが妙な冒険者パーティーがソロ冒険者に精神支配系の魔法でもかけて遊んでいるんだろうか。 「そいつら、何人でしたか?」 突然割り込んできた声の主に、全員が目線を向ける。そこに立っていたのはこの世界では珍しい黒髪の背の低い男だった。 「お前が転移者か」 警備課長に問われた小男は軽く会釈する。 「怪異対策課のネギシと言います」 ズンズンと男は医務室に入ってくるなり、男はブツブツと話し始めた。 「この連続怪死事件、被害者の職業が固定されているんですよね。『斥候』『剣士』『盗賊』『重騎士』『僧侶』『白魔道士』『格闘家』これ以外はいません」 「そんなありふれた職業、なんの特定材料にもらんだろ。どこにでもいるぞ。そんなの発見でもなんでもない」 警備課長が呆れ声で言う。 「えぇ、ありふれている。第48ダンジョンで連続怪死事件が起こる直前期ダンジョンに潜ったパーティーのなかに、先ほどの構成メンバーで組まれた冒険者パーティーがないか調べるとドンピシャでいました。『銀色カナリア』と言う中堅パーティーですね。職業自体はありふれてますが、先ほどの構成ぴったりとなるとなかなかいません。彼らは半年ほど前にダンジョン内で行方不明となっています」 「そいつらが『怪異』になったのか?」 テニュアがそう聞くと、ネギシはおそらく、と頷く。 「今回はどうやらきちんと名前のある怪異ですね。『7人ミサキ』と言うやつでしょう。山や川、海などで6人組の亡者に行き合うと、その仲間にされて組み込まれてしまうと言う怪異です。その中の1人が成仏するとまた新しい仲間を探すといいます。銀色カナリアの7人は死後も諦められなかったんでしょうねダンジョン制覇を。だけれどダンジョン制覇の証はたった1人に与えられるもの。だから一度に救われるのは1人だけなんでしょう。そうして新しく入ったメンバーは踏破後に亡者の群れに加えられる」 「その7人ミサキから解放される手段はないのか?」 「はっきりしたこと何とも。ただ、向こうで読んだ生還者の話ではふとしたきっかけで我に帰ったと言う話もありましたし、マルセスさんの場合、モンスターにぶん殴られて、強制的に意識が途切れたことで解放されたんでしょうね」 「対策は何かあるのか?」 「まぁ単純ですが、先ほどあげた7職業のソロ探索を禁止することでしょうね」 ネギシは言った。 「簡単に言うが反発がなぁ」 考え込む警備課長を無視してネギシはマルセスに話しかける。 「そうそうマルセスさん。あなたはもう絶対にダンジョンに近づいちゃダメですよ。もう彼らは完成してしまったし、他のダンジョンにも広まりつつある。彼らは怪異になってしまったんだ。この世界における現象の一つになってしまった。一度お仲間になったあなたはきっと誘われてしまう」 ネギシの語りに震えながらマルセスは頷いた。
「また貴様は遅刻したのか」 「いやースマホで時間見れないと今がいつかわかんなくなるんですよ」 「また訳のわからんことを・・・。しかしまぁ今回はなんとか対策が取れそうで良かったな。マルセスも助かって良かった」 そうギルドからの帰り道、テニュアがつぶやくとネギシはニタリと笑いながら 「いやもうあれはダメでしょ。どっぷりすぎる」 そういった。
マルセスがダンジョン最下層で見つかったのはその数日後のことであった。
架地③ 空け地
か‐ち【架地】 〘名〙
① 不安定な土地のこと。〔唐太宗‐置酒坐飛閣詩〕
② 存在しない土地のこと。 ※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「抑、伝説にあるアトランテイウス大陸なる架地では」
③存在しない番地。②から転じて
④(形動)不確かな前提に基づくさま。 ※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「そんな架地な事を宛にして心配するとは」 〔福恵全書‐蒞任部・攷代書〕
⑤災害が繰り返し起こる土地のこと
⑥何かを吊り下げるための土地のこと。崖と崖を繋ぐ橋の土台部分のある土地のことなどを言う。
⑦交通の要所のこと。土地と土地をつなぐ土地のこと。⑥の意義から橋のイメージからか。
[語誌]漢籍に典拠を持つが、近畿地方でかつて使われた「禍地(カチ)」が①の意義と混同される過程で集合し、⑤の意義が生じたものと思われる。
実家の横が空き地だった。 境界線トラブルといえばそうなのだろう。よくあるのは隣家との境界にあるフェンスがどちらの土地のものなのか、みたいな話だったり、軒が侵入していたりだったり、土地の奪い合いになっていたり。 実家の場合は少し違っていた。 昔からの地方の下町とも言える場所で、特になんらかの伝説とか事故がある場所ではない。 実家から東側の隣家との境界に幅20センチ奥行き10メートルほどの隙間がある。 その「空き地」の東西にはそれぞれの家の塀が立っていて、その間に剥き出しの土が見えている。 子供の頃、家の前で父親とキャッチボールをして遊んでいた時に、偶々ボールがその隙間に入り込んだ。 狭い隙間ではあるが、なんとか体を滑り込ませないかと、私がその空き地に入ろうとしたとき、父親が「入るな!!」と怒鳴った。普段温厚な父親からそんな声をかけられたこともなくて、私は随分びっくりしてしまった。それでもう、ボールどころではなくなってしまったし、我に帰った父親から謝られたのを覚えている。 ああ言う隙間に体や腕を入れると挟まってしまって危ないからね、といつも通りの父親に言われたのだ。
それ以来、なんとなく、私はその空き地に注意を向けるようになった。
すると、嫌なことに気づいてしまった。そこには見るたびに殆どいつも動物や虫の死骸が落ちているのだ。しかも体が捩れている。 トカゲ、トンボ、カエル、スズメ、ミミズ、ネズミ、インコ どれもこれもが捩れてひしゃげていた。 しかも、いつの間にかそれらの死骸は消えていた。 自分で埋葬してあげることも頭をよぎったのだが、あの父の怒鳴り声と生理的な恐怖から、その薄暗い空き地に手を伸ばすことができなかった。 でもある日我慢できなくなって父に聞くことにしたのだ。あそこは「なんなの」か。 父は虚な目をして分からない、と答えた。
ずっと前から、父の祖父の代からあそこは空き地になっているらしい。 いつの間にか空き地になっていて、最初はなあなあで特に困りもしないから放っておいたようだ。隙間に何か良くないものが流れ込んだのか、それともそんなだから空き地になったのかは分からないが、お互いに押し付けあっている土地になってしまったらしい。
死骸が湧いてくるんだ。
父はそう言った。捩れた死体が何処からともなくやってくる。風が運ぶのか、猫が持ってくるのか、気持ち悪くて確認したわけではないけれど、湧いてくる。
隣家の嫌がらせかと揉めかけたこともあったらしいが、お互いに特があるわけもなく、いつの間にか両家ともに手を触れないことが暗黙の了解になったそうだ。 別に祟りがあったとかいうわけではない。ただただ気持ち悪いのだ。
お前も、気にするな。 そう父は締め括った。
我が家の東側に窓がないのは、隣家があるからというだけではないのだな、とその時思い至ったのを覚えている。
それ以降、なるべく目を逸らすようにはしていたのだが、ある日家の前で送電線の工事が行われていて、それを学校から帰宅途中であった私はぼんやりと眺めていた。
隙間だから、埋めなきゃいけなくなるんだ。でも、死体で埋めようとするから上手くいかないんだ。
そんなことをふと思い、自分の思考の気持ち悪さに動揺していると、突如風が吹き、高所で作業をしていた作業員が足を滑らせた。叫び声と人間が転がり落ちる音。 思わず走り寄った私がみたのは、隙間に体が無理矢理に捩じ込まれてしまった人間の死体だった。
架地② 徒逃げ
か‐ち>【架地】 〘名〙
① 不安定な土地のこと。〔唐太宗‐置酒坐飛閣詩〕 ② 存在しない土地のこと。 ※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「抑、伝説にあるアトランテイウス大陸なる架地では」 ③存在しない番地。①から転じて ④(形動)不確かな前提に基づくさま。 ※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「そんな架地な事を宛にして心配するとは」 〔福恵全書‐蒞任部・攷代書〕 ⑤災害が繰り返し起こる土地のこと ⑥何かを吊り下げるための土地のこと。崖と崖を繋ぐ橋の土台部分のある土地のことなどを言う。 ⑦交通の要所のこと。土地と土地をつなぐ土地のこと。⑥の意義から橋のイメージからか。 語誌]漢籍に典拠を持つが、近畿地方でかつて使われた「禍地(カチ)」が①の意義と混同される過程で集合し、⑤の意義が生じたものと思われる。
怖い話、ですか? うーん、怖くはないのかな、これは。どちらかと言うと不思議な体験なのかな。 これは、私が▲▲山に行った時の話なんです。 小学校の遠足で行ったんですけど、中々ハードな遠足で、小学生にはそもそも少しきつかったんじゃないかな。 急な山道を延々と上る感じで、木々も鬱蒼としてて、割と本格的な山に思えました。 暑い夏の日で、なんだか喉がよく乾いたのを覚えてます。 そのせいか歩くうちにどんどんと頭がぼんやりとしてきて、いつのまにかみんなと逸れちゃってたんですね。 それで、気づくと目の前に小さな滝があったんです。喉があまりに乾いてたもんだから、手のひらで掬って飲んだんです。美味しかったなぁ。 でもやっぱり生水なんか飲むもんじゃないんですかね、飲むとすぐに気持ちが悪くなってきて、えづきはじめちゃったんです。 おえっと、はじめに少し吐くとまず、右手の感覚が無くなりました。 怖かったです。いきなり自分の手が自分のものじゃなくなったような感じで。動くは動くんですけど、感覚がなくて。 そこで漸く自分が遭難してることとかの恐怖がどっと出てきたんです。そうしたら、「おいで」と言う男の声が背後の滝から聞こえてきたんですよね。それがきっかけでうわぁとなっちゃって、パニックで走り出したんです。でも吐き気は続いてて、おえおえし続けてたんです。そのうち左手の感覚も無くなってきて、もう涙も出てきちゃって、そしたら体とか足の感覚も徐々に無くなってきてもう何が何だか分からなくなって、しまいには目も見えなくなっちゃって、走ってるのか転けてるのか何もわからないうちに、女の声で「いってらっしゃい」と言われたかと思ったら今度は女の子の声で「返して」なんて叫び声まで聞こえ始めて、もう半狂乱のまま走ってるとそのうち目も見え始めて足の感覚も戻って、気づいたら茂みを体中葉っぱまみれにしながら突き抜けて、クラスメイトたちのまん前に飛び出てたんですよね。 もう、みんな、私がいなくなったもんだと思って大騒ぎになる直前だったみたいで。 えぇ、とても怒られました。どこ行ってたんだって。 先生には滝のところに行ったんだと言う話もしたんですけど、この山にはそんな滝なんかないと言われてしまって。混乱してる私をみて、ひどい熱中症だと思われたのか、それ以上は先生も怒りませんでしたけども。 怖かった、と言われればそうなんですけど、なんというかどこか他人事みたいな感覚で、今思い出してもあんまり怖かったなぁ、とは思わないですね。
架地① 架地より参る
か‐ち【架地】 〘名〙 ① 不安定な土地のこと。〔唐太宗‐置酒坐飛閣詩〕
② 存在しない土地のこと。 ※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「抑、伝説にあるアトランテイウス大陸なる架地では」
③存在しない番地。①から転じて
④(形動)不確かな前提に基づくさま。 ※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「そんな架地な事を宛にして心配するとは」 〔福恵全書‐蒞任部・攷代書〕
⑤災害が繰り返し起こる土地のこと
⑥何かを吊り下げるための土地のこと。崖と崖を繋ぐ橋の土台部分のある土地のことなどを言う。
⑦交通の要所のこと。土地と土地をつなぐ土地のこと。⑥の意義から橋のイメージからか。
語誌]漢籍に典拠を持つが、近畿地方でかつて使われた「禍地(カチ)」が①の意義と混同される過程で集合し、⑤の意義が生じたものと思われる。
その年賀状が初めて来たのは5年も前のことになる。 その年の冬は雪は降るものの朝まで残ることはなく、地面がぐずぐずとしていたことを思い出す。 元旦の朝、郵便受けを覗いて年賀状の束を取り出して炬燵で仕分けをしていると見知らぬ人物から年賀状が届いているのに気づいた。誤配送かと思ったが確かに私宛になっていた。真っ白いハガキの中央に暗い丸がベッタリと油性ペンで書いてあり、その下に筆ペンで書いたような細い文字で文章が書いてあった。
昨年はお世話になりました。〇〇さんが気にかけてくださったおかげでなんとかやっていくことができました。来年も宜しくお願い致します。またご飯でも食べに来てください。
そんなことが私を名指しで書いてあった。 タチの悪い友人が余った年賀状で悪戯でもしてきたのかと思って新年早々なんとも言えない気分になったのを覚えている。年明け、送ってきそうな友人に声をかけたが誰もそんなものは送っていないと言っていた。悪戯をしたものの、後から面白くないことをしたと思って言い出せなくなったのだろうと思いすぐに忘れてしまった。 その翌年も同じ人物から年賀状が届いた。同じように黒々とした丸の下に文章が書いてあった。
昨年もお世話になりました。〇〇さんのお話はとても面白く時々思い出しては吹き出しています。中々2人きりで会う機会はありませんが、いつか2人で飲みに行きましょう。
そう書いてあった。すぐに去年来た妙な年賀状のことを思い出した。懲りないやつだなと思いながら年賀状の束の中に戻した。その翌年、私は地元から出ることとなり友人たちとは疎遠になった。元々性格がまめではなく、面倒くさがりの私は自分から年賀状を送らず来たものには返すという形にした。元旦に届いた年賀状は親類からのものを除けば例の人物からのものだけであった。
昨年もお世話になりました。〇〇さんは新しい土地でも元気にやっているようで安心しました。以前よりも会いやすくなりましたし、ウチにも顔を見せてください。
この時点で薄気味悪さを感じていたが、このとき初めて私は、年賀状の送り主の住所を確認した。隣県の住所だった。一度も行ったことのない県だった。 その翌年には遂には親類以外に私に届く年賀状は例の年賀状だけとなってしまった。
昨年はお世話になりました。うちも随分と賑やかになってきました。ウチの奴らも〇〇さんに会いたいと常々言っております。私だけ会っていてズルいなんて言うのです。紹介したいのでまた機会があれば宜しくお願い致します。
目を背けていた異常性を漸く認めた私は、遂にその送り主の住所を調べることにした。そんな住所は存在しなかった。いや、県も市も存在はするし近しい番地の土地は存在するのだが、明確に同じ番地の土地は存在しなかった。数字が一つ違いの土地は山奥の人里ひとつない山であった。 気持ち悪さを誤魔化すように、転勤を理由に私は今まで送ったことのある人間に手当たり次第に年賀状を送ることにした。元旦の朝に一枚だけ届くあの年賀状を見たくなかったのだ。
そうして迎えた元旦、私は若干の恐怖を抑えながら郵便受けを除くと、やはり、その年賀状は届いていた。真っ白な葉書に黒い丸が今年はふたつ。
昨年もお世話になりました。思えば〇〇さんとのご縁も長いものとなりました。うちのものたちも、お会いしたいと話しておりまして、ご迷惑かもしれませんが、お会いしていただきたく思います。近々そちらに伺いますので、その時は何卒宜しくお願い致します。
まるで塗り立てかのような油性インキのむせかえる匂いが葉書から漂ってきた。
税金で借りた本 第1回
えー少し前に「税金で買った本」という漫画をアプリで読み始めたんです。読み進めていくと、図書館で充電しまくる上にゲームばっかりしてて本を読まないやつが出てくる回があるんです。
この回がブッ刺さって、「図書館ってめちゃ有効に使ったらすげぇコスパいいんじゃねぇの!?」ということを考えたわけです。普段なら絶対自分で買わない本も借りれるし。
そんなわけで早速借りてきました。通常の読書と違って借りて雰囲気把握する感じの荒い読書になりました。借りられる2週間という期間の縛りが思いのほか厳しい。。。
絵画を読む イコロジー入門
絵画ってこう見るのか!!な本。とても勉強になりそうだったが読了できずに期間が来てしまった。これは改めてきちんと読みたい本。買うかもしれない。
A4一枚勉強法
これはもう、勢いで借りた。あまりに全てをA4一枚でどうにかしようとしすぎていて笑ってしまった。てっきりマインドマップとかそういうのの話が主かと思ったらそうではなかった。
まずは小さくはじめてみる
内容がかなりビジネスマン向けだった。ふーん、という感じ。この本にもA4サイズの紙に書き出してみる(p153)下りが出てきて変なリンクしているもんだと笑ってしまった。
読む力最新スキル大全
おー、よくもまぁまとめたなという感じ。個人的にこういう感じの情報収集はしていないけれど、ツイッターにいる「何の話題についても語る人」みたいなのはこういう情報の浴び方をしているのかな、と思った。読書への取り組み方は参考になる部分もあった。
この4冊で合計金額が4970円!
まぁ十分に味わえてはいないけれど、これだけの金額の本を自分で買うとなるとそこそこ気合がいるのでそれをこれだけ気軽にさせてくれる図書館という存在はありがたいものだと感じた。
また借りよう。
深夜の愚痴
昔から、何かを作る人になりたかった。
何かを作りたいと言う欲求は強くて、移り気な自分にしては珍しく、割とずっと続いてるモノな気がする。
ただ、何かを作るには忍耐があまりにもない。 飽き性だし投げ出してしまう。 切り絵も、刺繍も、イラストも。
長続きはしない。
なんなら、このブログが1番続いているのかも。コレをなんらかの「創作」とよぶことができるのであれば、だが。 Twitterの延長線にあることを思えば ただのゴミ箱かもしれない。
京極堂シリーズの関口くんも自身の作品を排泄物だとかなんとか言ってた気もするし、そんなもんなのかもしれない。
今更隠してもない話だが、今年から僕は大学院生になった。 まぁ流れとかタイミングとか色々あってなったわけだ。まだ正直実感もないけど、学会発表も少しずつ始まって、研究の計画も少しずつ動き始めている。 もしかしたら、この院生としての活動が僕にとっての創作行為にならないだろうか?
僕は、自画自賛する人間というか、自分の作品に非常に愛着を持つ。
ブログに書き殴った小説や記事、お気に入りのものは何度でも読み返す。その度にニヤニヤするのだ。 気持ち悪いやつだ。
もしも、研究発表がそんなものになってくれたら、それはとても良いことなのかもしれない。
そんなことを思った。